「もっと知りたい!米粉の魅力」– 知っておいしい米粉の話 –
近年、注目度がどんどん高まっている食材「米粉」。
なんとなく体によさそう……というイメージはあるものの、
実は米粉のことはあまり知らない、どう取り入れていいのか分からないという方も
少なくないのではないでしょうか。
そこで、米粉料理家としても活躍する管理栄養士の中村りえさんに
今さら聞けない初歩的な情報から期待できる効果まで
米粉に関するさまざまなお話を2回にわたって伺いました。
第2回は、おいしいだけじゃない、米粉の多彩な魅力についてお届けします。

教えてくれた人…中村りえさん
プロフィール管理栄養士/米粉料理家。食品メーカーで商品開発、健保組合でセミナーの企画や広報に携わり、独立。レシピ開発、コラムの執筆、メディアへの出演など幅広く活動中。家族のアレルギーをきっかけに米粉に出会い、そのおいしさに魅了される。日本人の米離れの深刻さを学んだこともあり、米食の素晴らしさを伝えるべく米粉や米食レシピを発信する。著書に『まいにち食べたい 体にやさしいお菓子』『米粉のおやつとおかず』(以上、宝島社)がある。
魅力その1
小麦粉よりも脂質が少なくお腹にやさしい
——米粉の栄養面での魅力はどこにあるのでしょうか?
米粉には、糖質、ミネラル、ビタミンB群、食物繊維など、さまざまな栄養素がバランスよく含まれています。特定の栄養素が突出しているというわけでもないので、毎食米粉を取り入れていただいても、栄養過多になる心配はほとんどありません。
また、米粉は小麦粉に比べて脂質が少ないという特徴もあります。小麦粉は100gあたり1.5gの脂質が含まれているのに対し、米粉は0.7gと約半分です。脂質が少ない米粉は消化しやすく胃腸に負担をかけにくいため、お腹にやさしい食材だといえるでしょう。

出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
*薄力粉の数値は1等粉に含まれる脂質の量を算出しています。
魅力その2
グルテンフリーの安心食材
——小麦粉も米粉も穀物を粉にした食品ですよね? 小麦アレルギーの人が米粉を食べても問題ないのはなぜなのですか?
小麦アレルギーの症状は、小麦に含まれるタンパク質によって誘発されます。近年よく耳にする「グルテン」は、小麦に含まれるタンパク質の一種です。米粉はグルテンを含まない食材なので、小麦アレルギーの方でも、グルテンが原因で体調を崩しやすいという方でも安心して食べることができるのです。
——確かに、お米や米粉を食べて具合が悪くなったという話は聞いたことがないような気がします。お米でアレルギーになることはないのでしょうか?
ごくまれに米アレルギーになる方はいらっしゃいます。ですが、小麦、鶏卵、牛乳の三大アレルゲンをはじめとする、表示義務のある「特定原材料」や、表示が推奨されている「特定原材料に準ずるもの」に入るほど多いというわけではありません。
——絶対にアレルギー反応が出ないというわけではないけれど、ほかの食材に比べると、比較的安全ということなんですね。
魅力その3
良質なタンパク質を効率よく補給できる!
——米粉を生活に取り入れて期待できることは、ほかにありますか?
ヒトの体をつくる重要な栄養素のひとつにタンパク質があります。米粉は、良質なタンパク質を摂るのに適した食材なんですよ。タンパク質を構成するアミノ酸のうち、必須アミノ酸がどのくらいバランスよく含まれているかを数値化した「アミノ酸スコア」というものがあるのですが、小麦(中力粉)が41なのに対して米粉(精白米)は65と、お米と同様にこの数値が高いんです。※1
なので、これから体が出来上がってくる成長期のお子さんや働き盛りの世代の方はもちろん、高齢の方にもぜひ米粉を積極的に取り入れていただきたいですね。
——なぜ、高齢の方にオススメなのでしょうか?
一見、健康そうであっても、「転びやすくなった」「疲れやすくなった」「外出が億劫になった」「生きがいがなくなった」などの悩みを抱える高齢の方は少なくありません。このように、加齢によって身体の機能や精神的な活力が低下した状態を「フレイル」といいます。つまり、今は支援や介護が必要というわけではないけれど、今後そうなる危険性が高い状態ということです。フレイル予防のためにも、また要介護状態になるのを防ぐためにも、高齢の方はタンパク質を摂取して筋肉の質と量を維持することが特に重要になってきます。ただし、人間は年とともに食が細くなる傾向があり、そのような方が限られた食事量のなかで十分な栄養を摂るのは簡単なことではありません。こうした面でも、アミノ酸スコアの数値が高く良質なタンパク質が含まれる米粉は、ぜひ活用していただきたい食品なのです。
——米粉の栄養を最大限に活用する方法はありますか?
実はお米を食べるときにみそ汁などの大豆製品を組み合わせると、アミノ酸スコアが100になるんです。米粉の場合も、きな粉やお豆腐などの大豆製品と組み合わせることで、アミノ酸スコアをアップさせることができます。パンケーキや蒸しパンに混ぜ込むのが、手軽でオススメです。お豆腐を使う場合は、クセのない絹ごし豆腐を選ぶといいと思います。
※1 出典:「食品のたんぱく質とアミノ酸」科学技術庁資源調査所(昭和61年)

魅力その4
揚げ物もヘルシーに!
——米粉はヘルシーだと聞いたのですが、本当ですか?
はい、本当です。米粉は小麦粉に比べて油の吸収率が低いというデータがあります。たとえば、鶏もも肉を揚げた場合、小麦粉を使った衣の油の吸収率が38%だったのに対し、米粉を使った衣の油の吸収率は21%でした。※2
油をあまり吸わない米粉なら、揚げ物もそれほど罪悪感なく味わうことができるのではないでしょうか。また、脂っこくないのでサクサクした食感が楽しめるのも、嬉しいポイントです。
——ほかに、米粉だからこその嬉しい効果はありますか?
ちゃんとしたデータがあるわけではないのですが、体感として、米粉を使った食べ物は、腹持ちがよく、お腹もいっぱいになりやすいです。これは、私ひとりの感想ではなく、レシピ本の撮影などで試食したスタッフの皆さんも同じようなことを言っていますね。
——おにぎりも、菓子パンなどに比べたら腹持ちがいいですもんね! おいしいだけじゃなく、こんなに魅力がいっぱいの米粉は、すぐに取り入れないともったいないです。早速、今日から米粉生活を始めようと思います!
※2 出典:「Oil Uptake Properties of Fried Batters from Rice Flour」 F.Shin and K.Daigle (J.Agric. Food Chem.47(1999))